目 次
レイトレーシングとは
レイトレーシング(Ray Tracing)とは、一言でいうと光線を追跡する技術のことです。光源から発せられる光の量や角度、屈折、反射などをコンピューターでシミュレーションすることによって、より現実世界に近い映像を表現することができます。ゲームや創作活動の場において耳にする機会も多いレイトレーシングについて、詳しく解説していきます。
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レンダリング技法の一つ
レンダリング(rendering)とは、コンピューター上でデータを処理・演算することで、画像や映像・音声・テキストなどを表示させることをいいます。さまざまな分野で活用されているレンダリングですが、リアルな映像を表現するために用いられる技法の一つが「レイトレーシング」です。
レイトレーシングは光の動きをシミュレーションして映像を表現する技法で、炎や煙、水面に映り込んだ景色など、より現実に近いリアルな3D映像を表現することができます。膨大な演算を必要とするため、従来は映画のCG制作など比較的大規模なプロジェクトで利用されることの多かったレイトレーシング。近年ではグラボやプログラミング技術の進化により、ゲームなど一般用途でも活用されるようになってきました。
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ラスタライズからレイトレーシングへ
レイトレーシングが登場する前の主なレンダリング技法の一つにラスタライズ(rasterize)というものがあります。ラスタライズとは何であるかを簡単に説明すると、3Dグラフィックスを表現する際にポリゴン単位で描画していく技法のことです。現在でもスマホやパソコン、ゲーム機などで3Dグラフィックスを描画する際は、このラスタライズ技法が使われてることが一般的です。
ラスタライズではデータ処理の負荷軽減のため、描画される内容はスクリーンに映し出される部分のみに限られます。どういうことかというと、例えばポリゴンの背面や、画面の枠外にあるはずの要素は存在しないものとして扱われます。そのため、画面の枠外にあるオブジェクトの影が描画されないなど、ややリアリティに欠けると感じることがあるかもしれません。
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リアルタイムレイトレーシングとは
レイトレーシングは映画のような娯楽以外にも、建築やインテリアなどの工業デザインにおいても活用されています。また、最近はゲームでも「レイトレーシング対応」と記載されているのを見たことがある方もいるのではないでしょうか。
先述の通りレイトレーシングによるレンダリングは膨大な演算を行うため、一つのフレームを出力するのに数時間から数日かかるということもよくありました。処理に時間をかけられるテレビや映画の映像とは異なり、ゲームではリアルタイムでの処理が求められます。そこで、グラフィックの高速処理に対応するために生まれたのが「リアルタイムレイトレーシング」という技術です。
2018年、NVIDIAがGPU「GeForce RTX 20シリーズ」を発表したことにより、ゲームにおいてもレイトレーシングでリアルな映像を楽しめるようになりました。
レイトレーシングでゲームの映像がリアルに
ゲームにおけるレイトレーシングの魅力はなんといっても、まるでその場にいるかのようなリアルな映像を楽しめること。より現実に近い光の屈折を表現することにより、水面や車体に映り込む景色はもちろんのこと、光と陰影、炎、煙などあらゆる要素が驚くほど丁寧に描写されます。 現実世界のようなリアルな映像の中で、自分の操作するキャラクターがヌルヌル動く様子は、レイトレーシング登場以前の映像とは比べ物にならないほどの臨場感を味わうことができるでしょう。製作側の思いが詰まったゲームの世界観を、映像を通して余すことなく堪能できるのはレイトレーシングならではの魅力です。
レイトレーシング対応ゲームの一例
レイトレーシングでゲームを楽しむためには、必要なスペックを備えたパソコンなどを用意することに加えて、ゲーム自体がレイトレーシングに対応している必要があります。
しかし、最近の大作ゲームではレイトレーシングに対応するタイトルが増加しており、ハイクオリティの映像表現をアピールしています。2025年7月現在、レイトレーシングに対応している主なゲームには次のようなタイトルがあります。
●ELDEN RING NIGHTREIGN(エルデンリング ナイトレイン)
●モンスターハンターワイルズ
●アサシン クリード シャドウズ
●DOOM: The Dark Ages
●真・三國無双 ORIGINS
●ファイナルファンタジーVII リバース
●インディ・ジョーンズ/大いなる円環
●黒神話:悟空
●Dune: Awakening
●龍が如く8 外伝 Pirates in Hawaii
レイトレーシングの注意点
レイトレーシングの機能を使えば、リアリティのある美しい映像を表示させることができ、より深い没入感を楽しむことができるでしょう。しかし、レイトレーシングをオンにすることによって、一部の機能が低下するなど注意しておきたい点もいくつかあります。ここでは、レイトレーシングを利用する際の注意点について解説します。
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GPUへの負荷が高い
レイトレーシングのデメリットの一つとしてよく挙げられるのが、GPUへの負荷が高いという点です。
従来のラスタライズでは、3Dモデルを平面に投影し、スクリーンに映らない部分を省略することでGPUやパソコンへの負荷を軽減していました。一方、レイトレーシングではスクリーンに映し出される映像について、届く光を光源までたどって描画します。そのためGPUによる膨大な演算が必要となり、どうしても負荷が大きくなってしまうのです。
GPUに高い負荷がかかるとパソコン全体の処理能力が低下してしまうため、動きが重くなったりカクついたり ということがあるかもしれません。快適な動作でゲームを楽しむためには、高性能なGPUが必要となります。
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フレームレートが低下してしまう
レイトレーシングを使用すると、フレームレートが低下してしまうという点も注意しなければなりません。フレームレートについては後ほど詳しく説明しますが、フレームレートが低下すると映像がカクカクとした動きになってしまいます。
レイトレーシングの機能をオンにすることによって、鮮明で美しい映像を楽しむことができます。しかし、せっかくの美しいグラフィックを表示できても、カクつきがひどければ没入感も損なわれてしまいますよね。また、FPSのように素早い反応や操作を求められるゲームにおいては、フレームレートの低下はゲームを進める上でも不利になってしまうでしょう。
● フレームレートとは
フレームレートとは、1秒間に描画できるフレーム枚数のことで、fps(frames per second)の単位で表されます。例えば、60fpsであれば1秒間に60枚のフレームを表示させることを意味し、フレームをパラパラ漫画のように連続で表示させることによって動画を構成しています。そのため、fpsの値が大きければ大きいほどなめらかな映像として認識され、逆にfpsの値が低いほどカクつきがひどくなります。
レイトレーシングによる鮮明なグラフィックはそれだけ情報量が多く、画質の低いフレームと比べると描画により多くの時間を要します。そのため、1秒間当たりに描画できるフレーム数が少なくなってしまうのです。
● フレームレートとリフレッシュレート
フレームレートと似たような言葉に、リフレッシュレートというものがあります。リフレッシュレートとはモニターの性能を表す要素の一つで、モニターが1秒間に画面を更新できる回数のことを意味し、Hz(ヘルツ)の単位で表されます。例えば、60Hzの場合は1秒間に60回画面を更新することができるということになります。
ここで気を付けたいのがフレームレートとリフレッシュレートの関係です。仮にフレームレート120fpsで出力したとしても、モニターの性能が60Hzであれば1秒間に描画されるフレーム数は最大60となります。なめらかな映像を楽しむためには、高性能なGPUだけでなくリフレッシュレートの高いモニターを用意する必要があります。
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映像の「美しさ」と「なめらかさ」
どちらを重視するかレイトレーシングの機能をオンにすると、どうしてもGPUへの負荷は高くなるため、フレームレートが低下してしまいます。高性能のGPUを使用することで、ある程度はレイトレーシングがオンの状態でもなめらかな映像を表示させることはできるかもしれません。
しかし、基本的にはレイトレーシングによるリアリティのある映像を取るか、もしくはレイトレーシングよりもフレームレートを優先してなめらかな映像を優先させるかのどちらかを選択することになります。
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パソコン全体の
スペックの高さが要求されるレイトレーシングの機能をオンにしてゲームを楽しむためには高性能なGPUが必要です。さらに、それだけでなくパソコン全体のスペックの高さも求められます。仮にGPUのみ高性能なものを用意しても、それ以外のパーツのスペックが低ければ、低スペックなパーツの性能に引っ張られ、他のパーツが本来の性能を発揮できないことがあります。
例えば先に説明したようにモニターのリフレッシュレートが低ければ、どれだけ高性能なGPUで高いフレームレートを出力しても、モニターのリフレッシュレート以上の映像が映し出されることはありません。快適にゲームをプレイするためには、GPUだけではなく、モニターやCPUなど、全てのパーツをバランス良く組み合わせることが重要です。
レイトレーシング対応のグラボの選び方
レイトレーシングを効かせてゲームをプレイするためには、一定以上のスペックのグラボを用意する必要があります。ここでは、レイトレーシングに対応したおすすめのグラボを紹介し、さらにグラボ以外にもパソコンのスペックを選ぶ際に役立つ考え方について解説していきます。
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レイトレーシングならNVIDIAのRTX
レイトレーシングをオンにしてゲームをプレイするのであれば、機能に対応したGPUが必要です。該当するGPUとしては、主に次の2つがあります。
- GeForce RTX(NVIDIA社)
- Radeon RX(AMD社)
どちらを選んでもレイトレーシング機能を利用することはできますが、「レイトレーシングといえばNVIDIAのRTX一択」といわれることもあるほど。AIを活用することで高画質のフレームを高速で生成するDLSS(Deep Learning Super-Sampling)という技術がありますが、これはNVIDIA社によって開発されました。同技術はNVIDIA社のGeForce RTXシリーズでのみ使用可能であるということも、RTXシリーズが優秀であるとされている理由の一つといえるでしょう。
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モニターの解像度によって
必要なスペックは異なる解像度とはモニターに表示されるドットの数のことをいい、ドット(画素)数が多いほど精細で美麗なグラフィックを表示することができます。しかし、解像度が高いということはそれだけ処理する画素数も増えるため、GPUやCPUに求められるスペックも高くなりますし、メモリーも大きな容量が必要となります。
モニターの解像度は主にフルHD、WQHD、4Kの3種類がありますが、選んだモニターの解像度によっても各パーツに求められるスペックが変わってくる点にも留意しておきましょう。
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ゲームの要求スペックに合わせる
全てにおいてハイスペックなパーツが搭載されたパソコンを用意できれば、ゲームのジャンルやタイトルに関わらず快適な動作でゲームを楽しむことができるでしょう。
しかし、パーツ一つにおいてもスペックが上がればそれだけコストも高くなってしまいます。コストを抑えてゲームを楽しみたいのであれば、ゲームごとに要求されているスペックを確認し、条件を満たすパソコンを用意すると良いでしょう。大抵の場合はゲームの公式サイトで推奨スペックなどを確認することができます。
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レイトレーシングを使うかどうか
レイトレーシングの機能を使えば、美麗なグラフィックでゲームをプレイできるので没入感は深まるでしょう。しかし、GPUやCPUの性能が低ければ、レイトレーシングを使うことでフレームレートが低下してしまう可能性もあります。
ゲームのジャンルによってはグラフィックの質よりも、動きのなめらかさやカクつきの少なさを重視した方が良いものもありますよね。自分がプレイしたいゲームは、フレームレートを下げてまでレイトレーシングを使いたいかどうかといった点については事前によく考えておくことが大切です。
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高性能GPUは消費電力が大きい
レイトレーシングに対応するGPUを選ぶ時は、性能だけでなく消費電力にも注意が必要です。最新の高性能GPUは、クオリティの高い映像表現や高精度な光の反射を描写するために多くの電力を必要とします。そのため、パソコンに搭載されている電源ユニットの容量が少なければ、GPUの操作が不安定になることもあります。また、それだけ発熱量も大きくなるため、適切な冷却ができるクーラーも必要になるでしょう。
つまり、どんなに高性能なGPUを選ぼうとしても、パソコンが対応できなければ搭載できないのです。電源ユニットや冷却システムなども考慮して、GPUを選択する必要があります。
最新のRTX 50シリーズは表現力が向上
NVIDIAは最新GPUとして、RTX50シリーズを発売しました。これまで以上に性能が向上しており、より高度な表現が可能になっています。最新のRTX50シリーズを詳しく解説します。
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レイトレーシング処理が強化
RTX 50シリーズでは、レイトレーシング処理のパフォーマンスがさらに強化されました。これまでのRTX40シリーズでも、リアルタイムのレイトレーシング処理は可能でした。しかし、RTX50シリーズではレイトレーシング処理を行う、RTコアという専用プロセッサーの性能が大幅に向上しています。これにより、よりリアルな光や影の描写が可能になったのです。高解像度で処理に大きな負担がかかるような状況でも、光の反射などをなめらかに表現できるようになったことで、ゲームへの没入感がより高まるでしょう。
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マルチフレーム生成で映像がなめらかに
「マルチフレーム生成」はRTX 50シリーズで、大きく注目を集めている機能の一つです。これまでのRTXシリーズでは1フレームごとの映像の前後をAIが解析して中間フレームを作成し、GPUに負荷をかけることなくフレームレートの高いなめらかな映像表現を実現していました。RTX50シリーズのマルチフレーム生成は、さらに多くのフレーム生成が可能になっています。4Kにレイトレーシング処理を加えるような負荷の高い処理を行っても、マルチフレーム生成でなめらかに映像を表現できるようになったのです。
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RTX 20~50の違い
NVIDIAのGPUにはRTX20~50シリーズがあり、世代を重ねるごとに性能と機能が大きく進化しています。それぞれの世代ごとに、どのような深化をしたのかを表にまとめました。
世代 特徴 対応技術 RTX20 レイトレーシング専用のRTコア、ディープラーニング処理を高速化するTensorコアを搭載 リアルタイムレイトレーシング、DLSS2 RTX30 大幅に性能、映像の表現力が向上 リアルタイムレイトレーシング、DLSS2 RTX40 レイトレーシングの性能、AIによるフレームレートが大きく向上 リアルタイムレイトレーシング、DLSS3.5、フレーム生成 RTX50 レイトレーシング、フレームレートを大きく強化。電力効率も向上 リアルタイムレイトレーシング、DLSS4、マルチフレーム生成 対応技術で紹介しているDLSSはNVIDIAの映像レンダリング技術のことで、映像の高解像度化やフレームレートの向上などを実現します。基本的に最新シリーズの方が高性能ですが、元々の性能が高いためRTX20シリーズでもまだ現役で使用することが可能です。
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AMDはRX 9000シリーズをリリース
NVIDIAのRTX50シリーズに対して、AMDは「Radeon RX 9000シリーズ」をリリースしました。RX 9000シリーズは従来モデルと比較してグラフィックス処理能力および電力効率が向上しています。また、RTXシリーズのDLSSに相当する技術はRX9000シリーズにもあり、FSRによって高解像度化やフレームレートを向上しています。RX9000シリーズは、主に高解像度でのゲームプレイを想定したGPUなのです。
RX9000シリーズのレイトレーシング処理は、専用プロセッサーのRTコアを搭載するRTXシリーズと比べてやや見劣りするといわれていますが、コストパフォーマンス面での優位性が評価されています。
また、パソコン向けのGPUではNVIDIAがよく注目されますが、家庭用ゲーム機ではPlayStation5をはじめ、AMDのGPUがよく採用されています。ゲームを中心に楽しむのであれば、RX9000シリーズも要チェックです。
グラボを利用するならBTOがおすすめ
レイトレーシング対応の高性能のグラボを搭載するのなら、パソコンをBTO(Build To Order)で購入することをおすすめします。BTOとは用途や予算に応じてCPUやグラボ、メモリー、ストレージ、電源ユニット、冷却システムなどを自分で選べる受注生産型のパソコンのことです。 グラボは電源ユニットの容量やサイズなどが、所有するパソコンに対応しているかどうかを調べた上で購入しなくてはなりません。しかし、BTOであれば動作確認済みの構成を選べるため、グラボの購入で考慮すべきポイントを気にする必要がなくなるのです。レノボの通販サイトでも、BTOのようにCPUやメモリーなどを自分で選択して、カスタマイズが可能です。ぜひチェックしてみましょう。
まとめ
レイトレーシングは従来のラスタライズと比べて、格段にリアルな映像を映し出すことができます。映像作品として楽しめることはもちろんですが、ゲームにおいてはリアルな映像の中で、自分の操作するキャラクターが自由に動く様子を楽しむことができます。まるで現実世界かと思うほどの世界観を満喫できるのは、レイトレーシングならではの魅力です。 一方で、レイトレーシングを使うためにはスペックの高いパソコンやパーツが必要となり、どうしてもコストがかかってしまいます。また、グラフィックの美しさを得られる反面、動作面ではある程度の妥協が必要となることもあります。一口にレイトレーシングといっても、ゲームによって求められるパソコンのスペックは異なるため、まずは自分がプレイしたいゲームの種類や表示させたい解像度を決めると良いでしょう。















