持ち運びやすさにAIパワーをプラス! これからのビジネスパーソンに 「ThinkPad T14s Gen 6 Snapdragon」をお勧めする理由


レノボ・ジャパンの「ThinkPad T14s Gen 6 Snapdragon」は、現状では数少ないビジネス向けのCopilot+ PCだ。実際に使ってみると、これからのビジネスパーソンにピッタリだと分かったので、その特徴を紹介してみたい。
昨今、「AI PC」がPC業界におけるトレンドワードの1つとなっている。その名の通り、AI PCは人工知能に関する演算処理を強化したPCで、具体的にはAIでよく使われる推論演算に特化した「NPU(Neural Processing Unit)」を搭載していることが特徴だ。Microsoftが5月に公表した新しいAI PCの定義「Copilot+ PC」では、少なくとも40TOPS(毎秒40兆回)以上の処理パフォーマンスを持つNPUのCPU/SoCへの統合を求めるなど、AI時代のPCに向けた基準が定められた。
Copilot+ PCのメリットはビジネスシーンでこそ役立つ面もあるのだが、当初はコンシューマー向けモデルが中心だった。そんな中、レノボ・ジャパンが発売した「ThinkPad T14s Gen 6 Snapdragon」は、現時点では数少ないビジネス向けのCopilot+ PCの1つだ。14型で約1.24kgから(※1)という軽量ボディーながらも、アイドル時で最大約37.4時間、動画再生時で最大約19.3時間という驚くべきバッテリー駆動時間を実現している(※2)。
軽くて大画面で、バッテリー駆動時間も長い――公称スペック通りなら、ThinkPad T14s Gen 6 Snapdragonは“理想的な”ビジネス向けノートPCといえる。その実態はどうか、実機を通して検証してみよう。
(※1)最軽量構成の公称値(構成によっては重量が増える場合があります)
(※2)JEITAバッテリ動作時間測定法(Ver.3.0)によるメーカー計測値

そもそも「Copilot+ PC」とは?
先述の通り、Copilot+ PCはMicrosoftが定義した「新しいAI PC」の基準を満たすPCに付与されるブランドだ。具体的な基準は以下の通りとなる。
• CPU/SoCに40TOPS以上の処理パフォーマンスを持つNPUを統合すること
• 16GB以上のDDR5/LPDDR5規格メモリを搭載すること
• 256GB以上のSSD/UFSストレージを搭載すること
これらの基準を満たすCopilot+ PCでは、Windows 11(バージョン24H2以降)において、通常のPCにはない以下の機能を利用できる。
• ライブ キャプション
o Windowsで再生している音声から自動的にリアルタイム字幕(ライブキャプション)を生成する機能
o Copilot+ PCでは字幕を任意の言語に翻訳して出力する機能を利用可能(※3)
o 翻訳の処理はPC内で完結するので、オフラインでも利用可能(※4)
• コクリエイター
o 「ペイント」アプリで利用可能な画像生成AI
o ラフスケッチを描いてプロンプト(言葉)で指示をすると、それに合った画像を生成
o 画像の生成処理はPC内で行われる(※5)
• イメージのリスタイル/イメージクリエイター
o 「フォト」アプリで利用可能なAI機能
o アプリで読み込んだ画像についてプロンプトで指示をすると、それに合った編集/修正を行ったり、画像を生成したりする
o 画像の編集/修正/生成処理はPC内で行われる(※5)
• リコール(※6)
o PCの表示内容や操作を随時記録して、それをプロンプトで「検索」できるように
o 記録(スナップショット)の保存判断や、インデックスの付与にNPUを活用
o 処理はPC内で完結するため、オフラインでも利用可能
• Windows Studio Effects
o Webカメラの映像に対してリアルタイムで加工を加える機能
o OSの機能として実装されるため、アプリに依存せず利用可能
o Copilot+ PCでは「プロンプター」「クリエティブフィルター」を追加で利用可能
• プロンプターは、画面の文章を読んでいる際の目線をリアルタイムに“正面”に補正
• クリエティブフィルターは、肌の質感をリアルタイムで補正
• 自動スーパー解像度
o ゲームアプリにおいて、レンダリング(描画)解像度を自動で調整してフレームレートを維持する機能
o DirectX 11/12に準拠したゲームアプリで利用可能
o アプリ側の特別な対応は不要だが、Microsoftが検証したアプリのみ有効となる
自動スーパー解像度を除く各機能は、一部にMicrosoftアカウントでのサインインが必要なものもあるが、ビジネス利用でも大いに役立つ。従来は別アプリに任せたり、いったんクラウド(インターネット上のサーバ)を経由しなければできなかったことが、ほぼPC内で完結するため、レスポンス(応答速度)の改善につながる。オンデバイス処理ということは、不必要な情報を外に出す必要もなくなるので、プライバシーや企業の機密保護にもつながる。さらに、Windows 11 2024 Update(バージョン24H2)の一般公開開始に合わせて、検索機能の拡張など新機能の発表も行われている。
(※3)翻訳元(ソース音声)は日本語を含む40超に対応、翻訳先(字幕表示)は英語のみ対応(2024年9月時点)
(※4)ライブキャプション用の言語データをあらかじめダウンロードしておく必要があります
(※5)倫理性を担保する観点から、プロンプトの解釈処理はあえてオンラインで行われます(オフライン時は利用できません)
(※6)2024年9月時点では実装されていません(2024年10月以降に「Windows Insider Preview」参加者を対象にプレビュー提供される予定)


「ThinkPad T14s Gen 6 Snapdragon」はどんなノートPC?
冒頭で触れた通り、ThinkPad T14s Gen 6 Snapdragonはビジネス向けCopilot+ PCの1つだ。先述したCopilot+ PCのメリットに加えて、ビジネス向けノートPCとして1992年から培ってきたThinkPadならではの特徴も備えている。
14型で約1.24kgからの軽量ボディー
本機は14型と大きめのディスプレイを搭載しつつも、最軽量構成の重量は約1.24kgとなっている。約313.6(幅)×219.4(奥行き)×16.9(厚さ)mmという本体サイズや、MIL-STD-810Hに準拠する耐衝撃/耐環境性能(12項目)を備える。レノボ独自の耐久性テストを行っていることも相まって、毎日安心して持ち運べる。
天板のWebカメラが収納されている部分には「コミュニケーションバー」と呼ばれる突起が用意されている。このバーの存在によってより高品質なMIPI接続のフルHDカメラセンサーを搭載できた上、画面を開きやすくなるという観点で大きなメリットをもたらしている。


レノボの直販サイトでは、ディスプレイパネルを以下の3種類から選べる。いずれもハードウェアベースのブルーライト抑制機能を備えており、色味への影響を抑えつつ目の疲労感を和らげる。
• IPS液晶(1920×1200ピクセル/省電力/非光沢)
• タッチ対応IPS液晶(1920×1200ピクセル/非光沢)
• 有機EL(2880×1800ピクセル)
今回レビューしたのはIPS液晶(タッチ非対応)を搭載する構成で、実測の本体重量は1223gだった。筆者が普段使っている13.3型ノートPCとほぼ同じ重量で、より大きな画面を使えるのは感慨深い。

省電力とパワフルさを両立した「Snapdragon X Elite」を搭載
本機はQualcomm製SoC「Snapdragon X Elite X1E-78-100」を搭載している。このSoCはSnapdragon X Eliteのラインアップの中ではエントリーに相当するもので、CPUコアのブースト機能に対応していない。
CPUコアはArmアーキテクチャベースの「Qualcomm Oryon」を12基搭載しており、最大3.4GHzで稼働する。GPUコアは「Qualcomm Adreno」で、ピーク時の性能は3.8TFLOPSとなる。NPU「Qualcomm Hexagon」のピーク性能は45TOPSだ。
メインメモリは16GB、32GBまたは64GBを備える。SSDはPCI Express 4.0接続で、SSD容量のラインアップは256GB/512GB/1TBだ。用途に合わせて選べるのはうれしい。

読者の中には、CPUが「Armアーキテクチャベース」であることが気になっている人が多いと思う。この点についてだが、業務システムがWebブラウザベースであれば全く問題ない。Windowsアプリについても、Intelアーキテクチャベース(x86/x64アプリ)でも大半はエミュレーションによって動作する。言われないとArmベースだと気が付かないレベルだ。
レノボが提供する主要なユーティリティーアプリについても、一部を除きArmネイティブで動作する。UEFI(BIOS)のセットアップ画面のUI(ユーザーインタフェース)や設定項目も、ここ数年のThinkPadと同様だ。




ただし、以下のいずれかに当てはまる場合は、事前にArmアーキテクチャへの対応や快適性を確認することを推奨する。
- • OSに用意されていないデバイスドライバが必要なハードウェアを使う場合(ハードウェア式のライセンスキーなど)
- • CPUアーキテクチャに極端に依存するアプリを使う場合(ゲームのアンチチートツールなど)
- • GPUに極端に依存するアプリを使う場合
- • 仮想ネットワークカード/一部のVPNアプリを使う場合(仮想デバイスドライバを使うものなど)
- • IME(文字入力システム)を別途導入する場合
充実のポート類
本機は、拡張性においても妥協はない。ポート類は、本体左側面にThunderbolt 4(USB Type-C)端子×2、HDMI出力端子とイヤフォン/マイクコンボ端子を、右側面にUSB 3.2 Gen 1 Standard-A端子×2(うち1基は常時給電対応)を備える。Thunderbolt 4端子はUSB PD(Power Delivery)による電源入力と、DisplayPort Alternate Modeによる映像出力にも対応する。
Thunderbolt 4端子は最大40Gbpsの「USB 40Gbps(USB4)」に準拠しており、超高速ストレージやドッキングステーションの接続にも対応する。拡張性もしっかりと確保されている。
ワイヤレス通信は、最新の無線LAN規格「Wi-Fi 7(IEEE 802.11be)」に加えてBluetooth 5.4にも対応している。Wi-Fi 7はクライアント数の多い環境や電波の弱い環境におけるスループット(実効通信速度)を向上するための工夫がなされている。対応するアクセスポイント/ルーターとの組み合わせが必要だが、より快適な通信を期待できる。


打ちやすいキーボードと使いやすいクリックパッド
ThinkPadブランドの特徴の1つである打ちやすいキーボードは、本機でも健在だ。カスタマイズモデルでは日本語配列に加えて米国英語(US)配列も選べる。両配列共に「Copilotキー」を搭載し、LEDバックライトも備えている。暗い場所でも快適なタイピングを期待できる。
このキーボードには、ThinkPadならではのスティック型ポインティングデバイス「TrackPoint」が搭載されている。キーボードのホームポジションから手を動かすことなくマウスポインターを動かせる利便性は、慣れると手放せない。このTrackPointは最新モデルで導入された「TrackPoint Quick Menu」にも対応しており、ダブルタップするとオーディオやカメラ回りの設定を行うランチャーが表示される。
キーボードの下には横幅約115mmの大きなクリックパッド(タッチパッド)も搭載されており、Windowsのジェスチャー操作も快適に行える。



高画質のWebカメラを搭載 人感検知機能を使った便利な機能も
昨今のビジネスシーンで欠かせないWebカメラは、フルHD(1920×1080ピクセル)撮影に対応する。接続はSoCに映像信号が直接伝送されるMIPI規格で行われるので、画質の劣化を抑えられる上、物理的なカメラハッキングも困難になっている。
このカメラには顔認証用の赤外線撮影ユニットの他、人感検知機能も備わっている。そのため、本体に一切手を触れることなくスリープの解除とWindowsへのログインを“数秒で”行える。慣れるとかなり快適だ(要設定)。
これとは逆に、本体から離れたことを検知して画面を自動でオフにしてロックをかけたり、視線が外れたことを検知して画面を暗くしたりする機能も用意されている。使い方次第では、とても便利だ。

「ThinkPad T14s Gen 6 Snapdragon」の実力をチェック!
ThinkPad T14s Gen 6 Snapdragonの特徴を一通りチェックしたところで、本機の実力をザッと確認していこう。今回は、本体の設定を変更せずに(出荷時のままで)テストを行っている。設定によっては結果が大きく変わる場合があるので注意したい。
CINEBENCH 2024
3Dグラフィックスのレンダリングを通してCPUのパフォーマンスをチェックできるベンチマークアプリ「CINEBENCH 2024」のスコアは以下の通りとなった。
- • マルチコア:662ポイント
- • シングルコア:108ポイント(MPレシオ:6.12倍)
本アプリはマルチプラットフォーム対応で、アーキテクチャが異なるCPUの演算能力も比較できる。スコアを見る限り、本機のCPUパフォーマンスはここ1~2年にリリースされた別アーキテクチャかつ同一レンジのWindowsノートPCと大差ないか、場合によっては上回る。参考に、約2年前のノートPC(Pコア6基12スレッド+Pコア8基8スレッド)ではマルチコア415ポイント/シングルコア96ポイントだった。
アプリが快適に動くのも当然といえば当然かもしれない。

PCMark 10(Applications)
PCの総合ベンチマークテストアプリ「PCMark 10」では、一部のテストがマルチプラットフォーム対応している。今回はそんなテストの1つで、Microsoft Officeアプリを利用した際のパフォーマンスを計測する「Applications」テストを実行した。
総合スコアは1万3079ポイントで、CINEBENCH 2024と同様に直近1~2年にリリースされた別アーキテクチャかつ同一レンジのCPUを備えるWindowsノートPCと大差ないか、場合によっては上回る。オフィスアプリの利用はもちろん、Webブラウジングもサクサクで、写真や動画の小~中負荷の編集も快適にこなせるレベルだ。
実際に使ってみて「意外と快適だな」と感じた筆者の印象は、どうやら間違っていなかったらしい。

CrystalDiskMark 8.0.4
先述の通り、本機はストレージとしてPCI Express 4.0接続のSSDを搭載している。レビュー機には、Western Digital製の「WD PC SN740」の512GBモデル(SDDQMQD-512G-1201)が装着されていた。公称では、シーケンシャル(連続)の読み出し速度は毎秒5000MB、書き込み速度は毎秒4000MBというスペックを備える。
このSSDを「CrystalDiskMark 8.0.4」で読み書きの速度をチェックしたところ、おおむねスペック通りのパフォーマンスを発揮できた。十分に高速で、OSやアプリの起動を素早く行えることはもちろん、高解像度の写真や動画を始めとするGB(ギガバイト)級のファイルの読み書きもサクッと進む。


驚異的なバッテリー駆動時間
冒頭で触れた通り、本機は公称でアイドル時に最大約37.4時間、動画再生時に最大約19.3時間というバッテリー駆動時間を確保している。バッテリーの容量は58Wh(定格値)とそこそこ大きめとはいえ、他プラットフォームでの同等容量のノートPCと比べると長めの駆動時間を確保している。
「本当にここまで持つの?」と疑問を持った筆者はまず、PCMark 10のバッテリーテスト(Applications)を使った駆動時間テストを行った。最近のモバイルノートPCはバッテリー駆動時間が長い傾向にあるので、用事で家を出かける前(正午過ぎ)にテストを開始した。
約9時間後に家に戻ると、まだバッテリーが半分も減っていない。驚きつつ、風呂に入るなどして、1時間半後に就寝した。そして朝起きるとまだ電源が入っている。最終的に電源がオフ(強制休止状態)になったのは、テストを開始してから19時間33時間後だった。正直、驚きである。
これだけバッテリー駆動すれば、多少の残業があったとしても、まる1日十分に仕事をこなせるはずだ。

良い意味でいろいろと驚いた
「ThinkPad T14s Gen 6 Snapdragon」
ThinkPad T14s Gen 6 Snapdragonは、現状では数少ないビジネス向けCopilot+ PCである。ArmアーキテクチャベースのSnapdragon X Eliteを搭載しているということもあって、「今までのWindowsノートPCと同じように使えるの?」と不安に思っている人も少なくないはずだ。筆者も例外ではない。
しかし、その不安は不要だった。本機は期待を上回るWindowsノートPCで、圧倒的にThinkPadだった。先述の通り、気を付けないといけない利用シーンはゼロではないものの、基本的には従来アーキテクチャのWindowsノートPCと同じように扱える。本機の場合、主要なユーティリティーアプリやUEFIセットアップも従来と変わりなく使える。
頑丈さやキーボードの打ち心地など、従来から変わらないThinkPadの価値に、Snapdragon X Eliteならではのバッテリー駆動時の省電力性がプラスされたことで、ThinkPad T14s Gen 6 Snapdragonはビジネスパーソンにとっての理想を詰め込んだノートPCとなっている。持ち運びも苦にならず、1日中外回りをするような業務に従事している人には特にピッタリだ。
自分のビジネス環境を吟味して、アーキテクチャへの依存度が低いなら、ThinkPad T14s Gen 6 Snapdragonは間違いなく2024年イチオシの1台といえる。ノートPCの買い換えを検討しているなら、ぜひ選択肢に加えてみてほしい。

この記事は、ITmedia PC USERからの転載です。