なぜThinkPadはThinkPadなのか
―ThinkPadの開発哲学

「スマート」な技術に固執しすぎたテクノロジー業界では、新しい機能を追加することに必死になり、時に人々が本当に必要としているものが何なのかを見失いがちです。レノボでは新製品の開発にあたりユーザーがどこで何をするかに関わらず、その成功をサポートするために、使いやすく、スマートで便利で信頼性の高い製品を設計、開発しています。私たちはこの理念を「ファウンデーショナル・エンジニアリング(開発哲学)」と呼んでいます。

コーヒーショップで電話会議に出ている状況を想定してみます。多くの人の話し声や食器類の立てる騒音の中での電話会議です。なんとか席を確保し、ACアダプターを接続して電源も確保しています。誰かが横を通り過ぎるときに電源ケーブルにつまずいたら、あなたのノートPCはひっぱられて、コーヒーと一緒に床に落ちて壊れるかもしれません。このような場面で真価を発揮するのが、ThinkPadに搭載された技術です。24時間のバッテリー駆動時間があれば、コンセントにケーブルを差し込む必要はありません。しかも、落下に耐えられるようにも設計されているのです。仕事であれプライベートであれ、ThinkPadは、ユーザーのさまざまな利用シーンを想定し「お客様の業務を止めない」ことをその開発哲学の基本としています。

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開発エンジニアの献身的取り組み

ThinkPadを最適で洗練されたものにするためには、多くの試行錯誤を含めた膨大な開発設計作業が必要です。製品を作り上げるまでには、厳しい品質およびユーザビリティの試験に合格しなければなりません。

技術と製品開発が何もないところから生まれることはありません。エンジニアは、製品を改良して最高のユーザー体験を提供する新たなイノベーションを生み出すために、デザイナーやカスタマーインサイト&ユーザーエクスペリエンスチームのプロ達と密接なタッグを組んでいます。レノボの法人製品ポートフォリオ担当であるJerry Paradiseは、次のように述べています。

「私たちは毎年、数千人のお客さまと話します。説明会、カウンシル、ネットフォーラムなどはすべて、カスタマーインサイト&ユーザーエクスペリエンスチームが技術チームとの有意義な議論を生み出すための貴重な存在です。ユーザーの不満を見極め、解決法を提示するための一貫したプロセスは、製品の各ライフサイクルを通して存在します。レノボの技術チームは、新たな機能がエンドユーザーに価値を生み出すことを想定し、自らが手掛けるシステムに誇りを持って命を吹き込んでいます。」

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今年レノボは、ThinkPad X1 Yogaの筐体にアルミニウムを採用しています。Paradiseは次のように述べています。

「お客さまは、金属筐体のThinkPadに対する強い興味を示していました。ThinkPadは長年時代を感じさせないタイムレスな黒いデザインが代名詞でしたが、お客さまの声を聞いた結果、新しいデザインに対して新世代の希望を受け入れる必要もあるのではないかという考えに至りました。」

私たちは長年さまざまな色、素材、および仕上げ技術を研究していますが、初期のアルミニウム製ノートPCではThinkPad の厳しい耐久性試験に合格できないであろうと考えていました。アルミニウムは強力で耐久性のある素材ですが、レノボの品質基準を満たす軽量薄型のノートPCとして十分とは限りません。ThinkPadの製品ラインナップにおいては、適切なところに適切な素材を使用することを徹底しています。Paradiseはさらに次のように述べています。

「製品の角などの部分では、無線信号を通す必要のある他の場所と比較してより強度が必要になります。適切なところに適切な素材を用いることが必要なのです。レノボは、アルミニウム製のノートPCを販売した最初の企業ではありませんが、これは妥協ではなく、ThinkPadである以上、ThinkPadらしさや高い品質にこだわったからなのです。」

レノボの軽量要件を満たしつつ、さらに薄型化することは、特に角と縁が、重要な設計上の課題となります。レノボのエンジニアリングチームはこれに正面から取り組みました。Paradiseは次のように述べています。

「新しいThinkPad X1 Yogaは第4世代のモデルですが、技術の視点から見るとアルミニウムの第1世代と言えるかも知れません。新しいX1 Yogaを厳しい試験にパスさせるために必要な要素を追求すると、実はThinkPadの基本的な技術理念に立ち戻ることになります。できる限り軽量薄型で、堅牢性、信頼性、サービサビリティ、およびユーザビリティを備えたThinkPadを生み出すことに私たちは誇りを持っています。エンドユーザーの体験において妥協することは、レノボの選択肢にはありません。」

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筐体剛性・軽量化・多様な機能を搭載できるボディ構造を実現し、なおかつアルミニウムの仕上げを活かすには、一個の金属の塊から、専用の刃物で削りだす工程により、外観形状と複雑な内部構造を共に加工するプロセスが必要となります。これには従来の成形ではなく、あらゆる方向から刃物を自在に動かしての切削や表面仕上げが可能なCNC(コンピューター数値制御)を使用して機械生産しなければならないため、設計プロセスは信じられないほど複雑です。ThinkPadの哲学を体現する耐久性と信頼性の要件を満たすため、角と縁の設計では高度な負荷試験のシミュレーションの数は40回を上回りました。これは同様の試験としては異例の回数です。デザイン形状、肉厚、コーナーの合わせなどを少しずつ変えて作ったモデルを3Dで設計し、多種のマトリックスからベストなものを選ぶという工程を繰り返します。このように似て非なる形状を全て最後までモデリングしてシミュレーションを行ったのです。最終的に、CNCカットの複雑さと製造工数のバランスがとられた設計となっています。

一貫した信頼性とユーザビリティの考え方

ThinkPadは26年にわたり、堅牢性の代名詞となってきました。ThinkPadのエンジニアは初期のノートPCの耐久性の課題から教訓を得て、継続的に信頼性の向上に挑戦してきました。ThinkPadは、MIL-STD 810で定義されているMIL規格(米国軍調達規格)を採用して以来、信頼性試験手法の範囲の広さと手順の厳格さ、さらにそれらを製品ラインナップ全体で一貫しておこなうという点において業界のトップを走り続けています。ThinkPadは22の異なるProceduresに合格しており、市場において、現在、最も信頼性と堅牢性のあるノートPCの1つです。

信頼性は、試験で完結するのではなく、ユーザビリティのニーズと一体のものと考えます。レノボは、冷却性能、処理能力、バッテリー駆動時間、および静音性の適切なバランスを見つけることに常に注力してきました。ThinkPad X1 CarbonおよびX1 Yogaは、インテリジェント・クーリングを搭載しています。これは、エンドユーザーの機能性を損なうことなく、ThinkPadの冷却性能を最大限に高めるために設計された仕組みです。インテリジェント クーリングには、「パフォーマンス・モード」、「バランス・モード」、および「静音モード」の3つのモードがあります。各モードは、ユーザーの利用状況に合わせて設計されています。エンジニアは、ユーザーのThinkPadの利用方法に関する300の異なる実際のシナリオを構築し、それをプログラムされたインテリジェンスと組み合わせることで、この最適化を可能にしました。ThinkPadは、画面を開いていても、バッグの中でも、机や膝の上に置かれていても、インテリジェント・クーリングによって、システムの処理能力を最大限に高めることができます。

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もう1つの開発哲学が実際の製品に反映された例は、ThinkPadの「ダストフリー」ファンです。このファンにより、埃の蓄積を原因とする故障およびダウンタイムを大幅に削減し、長期間にわたってThinkPadを冷却し快適な操作を維持できます。レノボのエンジニアはさまざまな環境で故障したパソコンのファンのサンプルを収集して、時間の経過とともにどのような種類の埃が蓄積するかを分析しました。そして、埃がファンに与える影響を評価するための「ダスト試験」が考案されました。結果として、埃の蓄積の原因である静電気を取り除く仕組みを取り入れた、業界唯一の「ダストフリー」ファンが生まれました。こうしてかつてフクロウの羽の効率性と静かさという自然界の知恵をヒントに開発された「Owl Blade」ファンは進化を続けています。

働き方改革を後押しするリモートワーク

本当にユーザーが求める製品を開発する上での技術的障壁のひとつは、ネットワークへの接続性と、効率的なコラボレーションをサポートする機能です。技術チームにとって、これは常時電源オンおよび常時接続を意味します。ThinkPad X1 CarbonおよびX1 Yogaに新しいUltraConnect アンテナ設計を採用したのはこのためです。新しいWWANアンテナ設計により、あらゆるモードでフルパフォーマンスでのLTE接続が可能です。また、X1 Yogaにおいては、ナノモールディングテクノロジーを使用することによってアンテナを製品の側面へ移動させつつ、信号性能の向上と筐体の強度の両立を実現させることができました。

ThinkPadで VoIPが使えたら便利だと思いますか?Voice assistantは?最新モデルではどちらも可能です。ThinkPad X1 CarbonとX1 Yogaは、カバーを閉じた状態でも、WLANおよびLTEでのワイヤレス接続ができます。ThinkPad X1 CarbonとX1 Yogaは、ノイズを排除する4つのFar-Filed 360度マイクを搭載しており、これによって集音方向を調整することができ、利用スタイルや場所に関わらず、パソコンを完全なスピーカーフォンのように最適化することができます。電話会議中に別のミーティングに参加するため移動する場合、PCを閉じても大丈夫です。会議への接続は継続され、WWANアンテナの設計によってLTE接続が維持されるため、最後まで会議に参加できます。

スマートであることは華やかなことですが、スマートでかつ実務の役に立つことはもっと重要です。レノボはお客さまの利用シーン中心のアプローチと、開発チームに受け継がれる開発哲学に立ち返ることにより、すべてのお客さまが使用期間を通して良い体験を提供する製品を開発しています。ThinkPadは、26年前に生み出された堅牢性と機能性を兼ね備え、お客さまの成功をサポートするノートPCを生産するという伝統的な哲学を通して、信頼を構築してきました。ThinkPadはモバイルコンピューティング革命の中心的存在であり、イノベーションの最前線に立ち続けています。

この開発哲学ストーリーは今後もシリーズとしてお届けする予定です。

 

※本原稿はレノボ本社広報サイトの原稿を抄訳したものです。https://news.lenovo.com/foundational-engineering-what-makes-thinkpad-thinkpad/