プロジェクト「Limitless」:世界初の 5G PC への挑戦
ワールドワイド・コミュニケーション・マネージャー、Justin Eure
2019 年 8 月 20 日
モバイル通信の次世代規格である5G による革命が間近に迫り、その盛り上がりも山場を迎えようとしています。5G が普及すれば、Always-on, Always-connected、つまりネットワークに常時接続された AI 主導の世界が現実のものとなり、従来とはまったく異なる通信が手元のデバイスで実現することになります。AIや5Gへの期待から、さまざまなバズワードが次から次へと生まれています。5G インフラ整備もいよいよ本格的な展開が始まり、レノボグループの一員であるモトローラ・モビリティでは 1 秒間に数ギガバイトの速度を実現する世界初の5G対応携帯電話を発売しました。スマートフォンで動画を瞬時にストリーミングしたり快適にゲームを楽しんだりできるのはもちろんのこと、5G にはそれらをはるかに超える応用の可能性があります。
レノボのインテリジェント・デバイス・グループのメンバーである Trey Paschal は、5G などのコネクテッド・テクノロジーを市場に投入するビジネス開発チームのリーダーです。彼は次のように述べています。
「5G は常時接続時代の始まりであり、消費者と業界全体に急激な変化をもたらします。間違いなく世界をトランスフォーム(変革)するテクノロジーであると考えています。レノボは世界初の 5G PC を開発し、この流れを牽引していきたいと考えています」
プロジェクトLimitless は、Qualcomm 社と共同で開発を進めている PC であり、同社の Snapdragon 8cx 5G コンピューティング・プラットフォームとパワフルな Snapdragon X55 5G モデムを初めて搭載したモデルです。ダウンロード速度やアップロード速度が高速であるのはそのメリットのほんの一端にすぎません。データを送受信する際には避けられないレイテンシー(遅延)が発生しますが、プロジェクトLimitless の本当の魅力は、これを克服する工夫にあります。4G ネットワークのレイテンシーはほんの数百ミリ秒ですが、その一瞬をなくすことですべてが変わります。
レノボのインテリジェント・デバイス・コンシューマー事業グループ担当シニア・バイス・プレジデント兼ゼネラル・マネージャーである Johnson Jia は次のように述べています。
「5G はレノボが提唱する Intelligent Transformation にとって不可欠な技術で、かつ非常にエキサイティングな変化をもたらすと期待しています。これまでにないアクセス性と速度を当社の PC で実現することで、利用者に利便性を提供します。レノボは常時接続によりシームレスにつながる世界で、より素晴らしい未来を切り開いてゆきたいと考えています」
前例のない今回の挑戦で、エンジニアリング・チームは当然新しい課題に次々と直面することになりました。かつてない速度で大量のデータが PC に流れ込めば、発熱の問題がおきます。例えるなら、バッファリングなしで 8K 解像度の映画を再生しているような状況です。さらに5G インフラは、文字通り初期段階にあります。ネットワーク規格は追加され続けており、今後の追加変更への適応力のあるテクノロジーが求められているため、将来に向け多数のアンテナを備えることが必要です。
これについて、Paschal は次のように語っています。
「ここでの目標は、まったく新しい機能を追加しながらも、デザインからパフォーマンスまで PC の操作性に妥協しないことでした。それを実現できたことを誇りに思います」
5G には評判どおりの価値があるか?
多数のアンテナの搭載や熱放散への対処について掘り下げる前に、本当に5G に取り組む価値があるのかを考えてみましょう。5G は、人々の生活を一変させる、次のような可能性を秘めています。
アンテナの問題
情報は電波に乗せて伝達されます。FM ラジオで音楽を聴く場合、ラジオ局には指定周波数があり、オーディオ情報はその周波数に正確に合わせた電波に乗せて伝達されます。これらの電波は比較的遠くまで到達しますが、この周波数を高くして電波をより短く速くすることで、より多くのデータを詰め込むことができます。例えば、ラジオから聞こえてくるポップ・ソングの信号を 10 倍の速度と密度であらゆる種類のデジタル信号と一緒に電波に乗せたとしましょう。これが実は 4G であり、今では動画のストリーミングも可能になりました。5G ではこの性能がさらに飛躍し、30 倍の速度になります。
これについて、Paschal は次のように説明します。
「5G は非常に短く速い、新しいミリ波周波数の電波です。6 ギガヘルツ未満の電波でも動作しますが、これはすでに現行の LTE サービスの一部で利用されており、私たちはその両方に対応する必要がありました。5G対応のアンテナを搭載することで、速度は飛躍的に向上しますが、マイナス面もあります。電波が遠くまで届かないため、5G サービスを提供するにはより多くのアンテナが必要なのです」
業界標準がまだ確立されていないことも、この問題をさらに難しくしています。ミリ波技術にはさまざまなアプローチがあるため、プロジェクトLimitless は今後登場する新たなインフラに備える必要がありました。つまり、5G 対応の複数のアンテナに加え、LTE 対応のアンテナを多数搭載することで、5G を利用できなくなっても PC の高度な性能を維持できなければなりません。7 つのセルラー・アンテナだけでも大きな装備ですが、さらに Wi-Fi や Bluetooth といったその他のワイヤレス通信機能も実装しなければなりません。
これらすべてを 1 台のスリムなノート PC に搭載するにはどうすればよいのでしょうか。
Paschal は次のように説明します。
「以前はノート PC の上部、画面の上のベゼル内にアンテナを配置できました。しかし、設計の要件はベゼルを最小限にした大きくて美しい画面であり、お客様も当然このようなデザインを好みます。そのため、私たちはアンテナの配置に工夫を凝らす必要がありました」
説明だけなら簡単に思えるかもしれませんが、実践は簡単ではありません。金属素材とアンテナは相性が悪いことが多く、アンテナは基板上の回路やハード・ドライブの近くではうまく機能しません。しかし幸運なことに、レノボにとって、Always-Connected PC への挑戦はこれが初めてではありませんでした。
Always-Connected PC の経験に基づく開発
2018 年 8 月、レノボはAlways-Connected PC への妥協のないアプローチを象徴する Yoga C630 WOS (Windows on Snapdragon)を発表しました。
「これはレノボ初の 4 アンテナ PC でした。そこで学んだことを活かし、さらに発展させたのです」と Paschal は語っています。
新しいデバイスでは、Yoga C630 WOS の常時接続機能とコンバーチブル・フォーム・ファクターに、ログイン用の赤外線カメラなどの拡張機能が追加する予定です。非常に重要なバッテリーについては、従来と同等のバッテリー駆動時間を維持します。この分野の PC が提案する外出先での利用に不可欠な機能です。
「これは強力なパートナーシップの結果でもあります」と Paschal は語っています。「Qualcomm は市場に登場したばかりのものも含め、4G ネットワークと 5G ネットワークを扱うこの分野で定評あるリーダーです。Qualcomm、そして同社の提供するファンレス PC でも高い効率とパフォーマンスを発揮するプロセッサーがなければ、このデバイスを実現できなかったのは明らかです」
2020 年発売予定の プロジェクトLimitless にご期待ください。
5G の詳細について分かりやすい“衝撃”的な説明は、以下の動画(英語)をご覧ください。