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レビュー:佐藤太郎(マウンテンスタジオ)
執筆:高橋克則

のおススメポイント
lenovoのゲーミングPCブランド「Legion」はゲーム初心者からコアユーザーまで幅広い層に向けて、多彩なラインナップを取り揃えている。その中でも2020年発売の17.3型ノートPC「Legion 550i」はエントリーモデルでありながら、GPUにはミドルクラスのGeForce RTX 2060を採用。ゲーミングPCと銘打っているが、もちろん3DCG制作も任せられるパフォーマンスを誇る。
今回はモーショングラフィックスを数多く手がけるマウンテンスタジオの佐藤太郎氏に、その実力を検証してもらった。Legion 550iの優位性や3DCGデザイナーに必要な素養、さらにはコロナ禍における制作環境の変化など、興味深い話題が飛び出した。
TEXT _高橋克則
PHOTO _弘田 充
佐藤氏はゲーム『ソードアート・オンライン -ロスト・ソング-』のオープニング映像監督をはじめ、企業プロモーション映像やイベント映像に携わるなど、数多くのモーショングラフィックスを手がけてきた。今回の検証では、Legion 550iを使用しマウンテンスタジオのロゴを絡めたモーショングラフィックスを制作してもらった。
まずLegion 550iのパフォーマンスについて「平面的なデザインのモーショングラフィックスを作るのであれば必要以上のスペックで、もったいないぐらいです」と太鼓判を押す。今回検証用に制作いただいたグラフィックは企業ロゴをもとに流体表現を用いたものとなっており、Cinema 4DおよびX-Particlesというパーティクルシミュレーション用プラグイン、また、Cycles 4Dという煙などの流体表現ができるレンダラーを使用。3DCGの表現も問題はなく「今回は煙を絡めた流体モーショングラフィックスを取り入れました。流体シミュレーションは時間がかかる作業ですが、このグラフィックの流体シミュレーションの計算自体は1時間もかかっていません。普段使用しているデスクトップ(※1)では約40分ほどかかることから、デスクトップに比べれば少々時間はかかるものの十分に使用できます。」と満足のいく性能を発揮したようだ。
※1:佐藤氏が普段業務で使っているデスクトップPCのスペック
CPU:Intel Core i9-9900K 8コア/16スレッド、GPU:GeForce RTX 2070 SUPER、メモリ:32GB、ストレージ:512GB SSD / 2TB HDD
PCスペックについて佐藤氏は「3DCG制作に求められるスペックは作業によって異なります。レンダリングのときはマルチコアCPUの方が良いですし、CGの描写をスムーズにするためにはGPUの性能が必要です。そしてメモリは複数のアプリケーションを同時利用する際やキャッシュを多用するシミュレーションを利用する際など、あらゆる作業のパフォーマンスに影響を与えます。検証機は1台で対応できるようにバランスがとられているので、これから3DCGを学ぼうとする人に向いているでしょうね」とコメント。ソフトウェアはバージョンアップごとに推奨スペックが上がっていくが、「エントリー層向けに1台目として導入してもしばらくは困ることのない絶妙なパフォーマンス」だと評価する。
続けて佐藤氏は「最初からハイエンド機を使って快適に作業をしたいと考えている人も多いかもしれないですが、私としてはあえてこうしたエントリークラスのモデルから使ってみることをおすすめします」と薦める。
「PCの性能が良ければ表現の幅は広がり、新しい手法も取り入れやすくなりますが、つねに最新鋭のPCが扱えるという環境は現実的ではありません。3DCGを仕事として扱う以上は、素晴らしい作品が生み出せてもハイスペックマシンでなければ作業ができないものを作ってしまっては意味がありません。その点、エントリーモデルを使った経験があれば、どのような機能やエフェクトが重い処理に繋がるかを体感できるため、環境に依存しないデザイン制作が身につくと思います」と、あえてエントリーモデルから始めることで必要な能力が身につくのではないかと語る。
いずれにせよPCのスペックに興味を持つことは、3DCGデザイナーにとって必要なことだという。佐藤氏はデザイナーの中にはPCに興味がない人も意外と多くいるという現状に違和感を覚えており、「だって大工さんなのにカンナやノコギリに詳しくない人なんていないでしょう」と例えてみせる。モーショングラフィックスはデザインだけでなく、演出やカメラ、照明などさまざまな知識を必要とされる仕事である。それゆえに何事にも関心を抱くことが何よりも重要で、それは商売道具であるPCも変わらないのだ。
その点から言えば、OSをWindowsとMacのどちらを選ぶのかも初心者にとって悩みの種となる。佐藤氏は「私もプライベートではMacを使っているのですが......」と前置きしながらも、「映像編集ソフトとは違い、3DCGソフトはプラグインも含めてWindowsに対応したものが多く、会社では9割以上がWin環境になっています」と、3DCGや流体表現をメインに扱う場合はWindowsであること自体がアドバンテージになるという。
Legion 550iを使用したモーショングラフィックス制作について、佐藤氏は「社外でもデスクトップと変わらない環境で使用できることが大きなメリットだった」と振り返る。「映像の収録現場などにノートPCを持ち込むこともありますが、これまではデスクトップと同じ作業はできないものだと諦めていました。もし現場で作業をしなければならない場合は、何とか動かせるようにするため、素材をコンパクトに切り詰める必要があったんですよ」と過去の苦労を明かした。
だが今回はそんな問題に悩まされることはなかったという。「この作品も以前であれば、外で作業ができるレベルのものではありません。でも検証機はGPUの性能のおかげで、出先でもストレスを感じずに進められました。正直なところ、RTX 2060が持ち運びできるノートPCのサイズに収まっていることは驚きですよ」。
さらにノートPCがテレワークによって生じる問題点を解消するための選択肢になりうるのではないかと推測する。「コロナ禍のため弊社でもテレワークを推進していますが、自宅と会社で2台のパソコンを使うとデータの取り扱いが不便になります。リモート作業は通信状態によってトラブルも起きますし、設備にも当然お金がかかる。それならノートPCを持ち運ぶということは、現実味のある解決法の一つだと思います」。
Legion 550iは17.3型の大型モニタを採用しており、一般的な作業であれば画面を狭く感じることはない。外部出力もHDMIやUSB3.0 Type-Cなど充実しているため、より繊細な作業が求められるときも「出先では外部モニタに出力して、ノートPCには計算だけを任せることもできる。そういった状況が作れること自体に魅力を感じています」とさまざまな利点を述べる。細かい部分では、キーボードにテンキーが搭載されていることも、数値入力が多い3DCG制作ではストレスを減らすポイントになったそうだ。
最後は今後のモーショングラフィックスに求められることについての話題に移った。佐藤氏は「モーショングラフィックスはつねに進化していて、移り変わりが激しい表現です。近年は平面的な表現は出尽くしてきた印象があり、立体的な展開や流体を制御したデザインが求められています」とその傾向に触れる。ただし平面の表現がこのまま廃れるのかといえば、決してそうではない。「モーショングラフィックスはファッションと同じように流行が巡っていくんですよ。ただもう一度戻ってきたときには前回と同じではなく、新たな進化を遂げたデザインに変わっているはずです」と予測する。
そんな移り変わりの激しい表現だからこそ、佐藤氏は「演出家は"古い映画を沢山観ろ"と言われますが、デザイナーは"新しいものに沢山触れるべき"です」と断言。そして「マウンテンスタジオが渋谷に事務所を構えているのも、それが理由のひとつなんですよ」と打ち明けた。
「渋谷はスクランブル交差点を中心に沢山の街頭ビジョンがあって、歩いているだけで膨大な数の映像やモーショングラフィックスが自然と目に飛び込んできます。そういった作品は、私たちが超えなければならない指針になるんです。"同じものを作りたい"と憧れているだけではダメで、"さらに上を行くようなものを作らなければ"と思わなければいけない。デザイナーとして成長できる街だからこそ渋谷を拠点にしているんです」とコメント。「でも"ヤバイ! これを超えないといけないのか......"とプレッシャーを感じることも多いですけどね」と笑顔を見せた。
Legion 550i (17) の製品情報はこちら
出典元:CGWORLD.jp https://cgworld.jp/interview/202012-lenovogaming.html https://cgworld.jp/
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