細部までしっかり作られたコダワリのゲーミングPC<Lenovo Legion T770i>の内部を分解チェック!

ゲーミングPCの性能は、搭載するCPUとビデオカードでほぼ決まる。そのため、製品選びにおいてもこの2つが重視されることが多い。
しかし実際に動かしてみると、クーラーの冷却性能不足で十分な性能が出ていない、性能は確かに高いが掃除機のような轟音がするなど、納得できない結果になってしまうものも少なくない。いくらスペック上は間違っていないといっても、これでは製品としておかしいと言わざるを得ないだろう。
こういった不安なく使え、さらに静音性やデザイン面でも優れたゲーミングPCとしてオススメしたいのが、Lenovoの<Legion T770i>だ。
目次


テスト機の主なスペック | |
---|---|
CPU | インテル® Core™ i9-12900K プロセッサー (3.2GHz 最大 5.20GHz) |
OS | Windows 11 Home 64bit |
メモリ | 32GB DDR5-4800MHz (UDIMM) (2 x 16.0GB) |
ストレージ | 512GB SSD, M.2 PCIe-NVMe (専用ヒートシンク搭載) + 2TB HDD 7200 rpm |
グラフィックス | NVIDIAR GeForce® RTX™ 3080 LHR 10GB GDDR6X |
無線通信 | Bluetooth® + Wi-Fi 6対応 (IEEE 802.11ax/ac/a/b/g/n準拠) 2x2 |
電源アダプター | 850W |
今回試用したモデルは、CPUにCore i9-12900K、ビデオカードにGeForce RTX 3080を搭載するというハイエンド構成だ。さらにストレージは512GBのSSDに加え、2TBのHDDまで搭載。写真や映像といったデータを多数保存できるほか、大型タイトルのゲームを複数インストールしても余裕があるというのがうれしい。
スペックでのこだわりポイントといえるのが、メモリーにDDR5を採用しているところ。コストダウンのため妥協してDDR4を採用するのではなく、ハイエンドらしく最新のDDR5を選んでいる点に好感がもてる。
実はSSDにもこだわりがあり、こちらも高速モデルが採用されている。この速度に関しては、後ほどベンチマークで確認していこう。
カスタマイズ性の高い美しいライトアップと便利なユーティリティ「Vantage」
ゲーミングPCといえばライトアップが必須、といっても過言ではないほど、光らせている製品が多い。なかには申し訳程度にファンだけ光っている……というものもあるが、<Legion T770i>ではかなりこだわったライトアップ機能となっている。
まず驚いたのが、ライトアップパーツの多さ。リストアップしてみると、前面パネルのロゴ、内部ライト、水冷ヘッド、背面ファン、前面ファン(3基)、天面ファン(2基)という、6ヵ所9つものパーツが光るようになっているのだ。
しかも、光らせるパターンや色を、ユーザー好みに細かくカスタマイズ可能。光らせたくなければ、消灯もできる。


このライトアップのカスタマイズは、総合ユーティリティの「Vantage」の機能として提供されている。メイン画面右下の「照明」からカスタマイズ可能だ。

面白いのが、パターンとしてCPU温度が用意されていること。これはCPUの温度によって色が変化していくもので、PCに負荷がかかっているというのがビジュアル的にわかる。個人的な好みだが、このCPU温度設定を水冷ヘッドに設定しておくのをオススメしたい。
ちなみに、このVantageは非常に多機能なユーティリティとなっており、ライトアップのカスタマイズだけでなく、PCのメンテナンス全般で活躍してくれる。いくつかその機能を紹介しておこう。



PCの設定を見直したい、調子が悪くないか確認したい、といったPCに関わる設定、情報確認を手軽に行えるというのが、Vantageの魅力だろう。
ハイエンド構成は伊達じゃない!<Legion T770i>の性能面をチェック
Core i9-12900KとGeForce RTX 3080を搭載するハイエンド構成ということもあり、やはり性能が気になるところ。定番ベンチマークソフトを使い、簡単にその性能を紹介していこう。
まずは、PCの総合性能を測る「PCMark 10」でのチェックだ。総合スコアが分かるだけでなく、用途別となるサブスコアもチェックしておきたい。サブスコアは、ビデオ会議やブラウザーなどの速度を評価する「Essentials」、オフィスソフトの動作を調べる「Productivity」、動画や写真編集、レンダリングといったクリエイター向きの「Digital Content Creation」の3ジャンルだ。

総合スコアは9222とかなり高く、性能がしっかりと発揮できている様子がうかがえる。各サブスコアも高めになっており、文句のつけようがない。とくにグラフィック性能が高いこともあって、Digital Content Creationのスコアが優秀だ。
続いて3Dグラフィックス性能を見ていこう。ゲーミングPCにとって最も重要な項目ともいえるものだ。定番の「3DMark」を使い、デフォルトのテストとなっている「Time Spy」を試してみた。

Time Spyのスコアは16740で、ハイスペック構成にふさわしいスコアとなっていた。これだけの性能があれば、多くのゲームが4Kでも快適に遊べるだろう。
もうひとつ、3Dグラフィックス性能のテストとして、人気MMORPGの『ファイナルファンタジーXIV』用ベンチマークソフト「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」も試してみた。
比較的軽めなゲームとなるものの、画質を高め、4K解像度でプレーするとなると、かなりの性能が要求される。しかし、MMORPGは画面の美しさで臨場感が大きく向上するため、それだけの価値がある。
そこで、解像度を「3840×2160」(4K)、画質設定をプリセットの「最高品質」として試してみた。

結果は見ての通り「とても快適」というもので、4Kの高画質設定でもストレスなく楽しめるだけの性能があることが確認できた。
もう少し細かく見ると、平均フレームレートが95.2fps、最低フレームレートが55fpsとなっていた。悪条件が重なっても60fps近く出ているため、プレー中にカクツキが気になるということはまずないだろう。
最後に、意外と妥協されてしまいがちなSSDの性能も見ておきたい。こちらも定番の「CrystalDiskMark」を使用した。

SSDで注目されるのは容量で、速度はあまり気にされないことが多いが、細部までこだわる<Legion T770i>では、このSSDの速度も重視。非常に高速なモデルが採用されていた。
この高速SSDのいいところは、シーケンシャル性能だけでなく、ランダム性能にも強いこと。テスト中実感したのが、大型アプリのインストールだ。
ベンチマークソフトやゲームはファイルサイズが非常に大きく、数GB~数十GBとなることも珍しくない。しかも、ファイルは圧縮された状態でダウンロードされる。そのためインストール手順は、ファイルを解凍してからインストーラーを起動することになる。
この最初のファイルの解凍はかなり時間がかかるものだが、この時間が明らかに短いのだ。高速なCore i9-12900Kとの組み合わせの効果もあるとはいえ、体感できるレベルで待ち時間が短いというのはうれしくなる。
もちろん、インストール中もファイルの解凍やコピーが多数行われるため、SSDは高速であるほど快適なのは間違いない。
快適という意味で少し触れておきたいのは、フロントインターフェースについて。昨今ではタワー型PCでもUSBの数が2つくらいしかないものが多いのだが、<Legion T770i>はしっかりと4つ用意されている。一時的に接続するUSB機器……例えばゲームパッドやヘッドセット、USBメモリーなどの利用で重宝する。

もちろんマイクやヘッドホン端子も用意されているので、USBではなくアナログ接続で使いたいという場合にも対応できる。
デザイン面で優れ、性能が高く、使いやすさまでも追及している<Legion T770i>。本稿のようなレビューでは、メーカー製PCの内部を見せることはあまりないのだが、かなり凝った作りになっていただけに、分解して詳しく紹介していこう。
ケース内部の空間をキレイに見せる様々な工夫
ゲーミングPCは「見た目も性能のうち」と考えられているようで、ガラスの側面パネルを採用し、内部が透けて見えるようになっているモデルが多い。<Legion T770i>もそういったモデルのひとつで、凝ったライトアップ機能と合わせ、内部を眺めて楽しめるようになっている。
ただし、何の工夫もなしに内部を見せてしまうと、ぐちゃぐちゃになったケーブルがあるだけで、面白くないどころかむしろ不快に感じてしまうだろう。その点<Legion T770i>は、 内部のパーツ固定や配線まで、しっかりと魅せる作りとなっている。
どういった工夫が凝らされているのかを中心に、分解してみていこう。

ガラスパネルを取り外すと内部全体がよく見える。まず気づくのが、ケース内のケーブルがかなり少なく、目立たなくなっていることだ。
これは裏配線が多用されているというだけでなく、うまく隠せるよう、ダクトを兼ねたカバーがあることが大きい。


このカバーは斜めのラインの入ったカーボン調のデザインとなっており、ケーブルを隠しているだけでなく、ガラス面にあるLEGIONロゴの背景にもなっている。デザイン的にも、かなり重要なパーツだ。
もちろん実用性も考えられていて、前面から取り込んだ風をケース内に無駄に漂わせず、パーツ、とくにビデオカードに送り込めるようになっている。ゲーミングPCでは、CPUと同じくらいビデオカードの冷却も重要。この補助として働いてくれるというのがうれしい。
続いてCPUクーラーを見ていこう。
ハイエンドとなるCore i9-12900Kを静かに、そして強力に冷却するため、水冷CPUクーラーが採用されている。しかも、ラジエーターのサイズは360mm。ラジエーターはヒートシンクと同じ役割となり、大きければ大きいほど、冷却液の温度を下げやすくなる。
一般的な240mm以下のラジエーターではなく、この巨大なラジエーターを採用したのは、冷却にも静音にも妥協しないという姿勢の表れだろう。


側面からの写真で気づいた人もいると思うが、この水冷CPUクーラー、冷却液を運ぶチューブがうまく隠されている。
このチューブの処理はかなり難しく、急な角度で曲げると潰れてしまうし、水流にも影響が出てしまう。つまり、冷却液の流れが悪くなって冷却性能が落ちてしまうのだ。そのため、水冷CPUクーラーを使う場合はチューブに手を加えず、ケース内で野放しになっていることが多い。
しかし、<Legion T770i>はこの チューブにもこだわり、無理のない角度で取り廻せるよう、ケース上部にガイドを設置。冷却性能を落とすことなく、側面からほとんど見えない位置に移動しているのだ。

もちろん、性能には直接関係のない部分ではある。しかし、チューブがケース内で見えていると、水冷ヘッドが隠れてしまうため、せっかくのライトアップ機能が台無しだ。この水冷ヘッドはLEGIONのマークとなっているだけに、しっかり見せるためのこだわりといえるだろう。
自作PCとは違う!? ビデオカードとオンボード機能
最近のビデオカードはGPUからの発熱だけでなく、メモリーからも発熱が大きくなっているため、ヒートシンクが大型化してきている。そのため重量がかなり増えており、スロットとブラケットのネジだけでは支えるのが厳しい。
自作PCなどでは、下からビデオカードを支えるステイやホルダーが使われることが多いが、これは外から丸見えで、見た目にあまりいいものではなかった。
<Legion T770i>では、 ケースが専用設計という利を生かし、専用の金具を用意。ブラケット側は4スロットぶんを使って押さえるようにしてあるほか、逆の端も、L字金具を付けてしっかりと支えられるようになっていた。


とくに怖いのは、ビデオカードの自重でスロットに負荷がかかり、長期間使っていると不具合の原因となってしまうこと。ひどいとスロットの根元が割れてしまうことまで考えられるため、これを未然に防げる設計になっているのは安心感がある。
もちろん、移動や輸送時の振動にも耐えられるという意味合いもあるだろう。
マザーボードの中央右にはLEGIONのマークが施されているなど、見えない部分にもこだわりがある。また、M.2スロットが3つ用意されており、高速なSSDを増設できるというのもいいところだ。1つは使用済みとなっているので、あと2つ増設可能だ。

もうひとつ、オンボード機能で注目したいのがWi-Fi機能の搭載。「タワー型のゲーミングPCでWi-Fi?」と思う人もいるかと思うが、遅延の影響が大きいFPSなどでなければ、Wi-Fi接続でも十分遊ぶことができるゲームは多い。もちろん有線LAN接続の方がいいのは確かだが、自室までケーブルを引き回すのが大変だったり、見た目の悪さから、家族に反対されてしまうという人にとって、Wi-Fiでも接続できるのはありがたい。
このWi-Fiは当然ながらWi-Fi 6に対応し、高速接続が可能。ルーターもWi-Fi 6対応であれば、有線LANを越える1Gbps以上の実速度で通信を行えることもある。

ここで疑問なのが、PCの周囲をぐるっと見回してもアンテナが見当たらないこと。デスクトップPCの場合、外付けアンテナが用意されていることが多いのだが、ぱっと見ではアンテナ端子が見当たらない。
そこで、Wi-Fiモジュールからアンテナケーブルをたどってみたところ、なんと、フロントパネルの内側と、背面の黒いボックス内にアンテナがあることが確認できた。別途アンテナを装着する必要がなく、通信しやすい場所に最初から配置されているというのはありがたい。


拡張性もしっかり確保!HDDの増設もしやすいケーブリングの妙
こだわりの組み立てとして見て欲しいのが、裏側の配線だ。ライトアップが多用されているPCは、とくに配線が多くなりがちだ。そのため、空きスペースに不要なケーブルが突っ込まれていたり、行き場のないケーブルがブラブラしていたりするのだが、<Legion T770i>はほとんどの ケーブルが結束バンドでまとめられており、キレイに配線されていた。
言葉で説明するよりも、見てもらう方が早いだろう。

無造作に束ねられているようにも見えるが、よく見ると、電源やUSBといったように、用途別に分かれており、配線し直す必要に迫られた時でも、追いやすくなっている。
この配線を見ていて感心したのが、3.5インチベイの部分。HDDの増設に使われるもので、既に2TBのHDDが装着されているのだが、その上、空き部分に注目して欲しい。なんと、空き部分にも電源とSATAケーブルが予め用意されているのだ。

また、この裏側には2.5インチベイも用意されているので、SATA接続のSSDを増設したい、といった時でも大丈夫。タワー型らしい、しっかりとしたストレージ拡張性がある。

スペックだけでなく、 完成度の高さで選ぶ人に、 自信をもっておすすめできる <Legion T770i>
排気口となる天面は、ホコリやゴミ、ネジなどが入り込まないよう、金属メッシュを採用。そこそこ強度も高いので、ちょっとした小物……USBメモリーやヘッドセットなどを置いても大丈夫だ。
内部のホコリを掃除したいときは、ガラスのサイドパネルを外し、内側からツメを押してやれば、簡単に取り外せる。

底面には、電源用の吸気口を装備。床近くに置く場合、どうしてもホコリを吸い込んでしまいがちだが、これを阻止するフィルターが装着されている。ネジ止めとなるため掃除するには少し大変だが、PCを動かした拍子にフィルターがずれていて、ホコリを大量に吸い込んでいた……といった失敗がないのがメリットだ。

こういった、日々のメンテナンスも配慮されているというのは、長く使いたい人にとってうれしいポイントといえる。
ライトアップを含めたデザイン、そして性能・静音性にもこだわった、完成度の高いゲーミングPCが<Legion T770i>。内部のしっかりした作りや工夫を見れば、長くPCを作り続けているトップメーカーの矜持すら感じられる。
スペックだけではない、満足いくゲーミングPCが欲しいなら、購入候補のまず最初に挙げたい1台だ。きっと満足できるだろう。

テスト機の主なスペック | |
---|---|
CPU | インテル® Core™ i9-12900K プロセッサー (3.2GHz 最大 5.20GHz) |
OS | Windows 11 Home 64bit |
メモリ | 32GB DDR5-4800MHz (UDIMM) (2 x 16.0GB) |
ストレージ | 512GB SSD, M.2 PCIe-NVMe (専用ヒートシンク搭載) + 2TB HDD 7200 rpm |
グラフィックス | NVIDIAR GeForce® RTX™ 3080 LHR 10GB GDDR6X |
無線通信 | Bluetooth® + Wi-Fi 6対応 (IEEE 802.11ax/ac/a/b/g/n準拠) 2x2 |
電源アダプター | 850W |